ガーデニングを楽しむ際に雑草には悩まされます。
抜いても抜いてもパワフルに生えてきます。大変生命力のある力強い草ですよね。
狭いスペースなら雑草を抜く手間も少しでさほど労力は要りませんが、敷地が大きくなればなるほど雑草を引く作業は重労働になってきます。

その草抜きの労働を何とかできないかと考えられたものが除草剤です。
今回は一般的な除草剤の安全性について考えてみようと思います。

かつてベトナム戦争でも使われた農薬

除草剤にも種類があるようですが、有名どころの2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)の入っている除草剤はなかなかの曲者です。(良い意味の有名なら嬉しいのですが…)

2,4-ジクロロフェノキシ酢酸は略して2,4-Dとも表示されます。
この2,4-ジクロロフェノキシ酢酸は、2・4・5-T(トリクロロフェノキシ酢酸)との混合物が、かつてベトナム戦争の時に枯葉剤として空中から散布されました。

当時この2・4・5-T(トリクロロフェノキシ酢酸)にダイオキシンが混入していたこともあり、その後ベトナムで産まれた子供たちに奇形や流産、発ガン等の後遺症が発生したことは大きな社会問題となりました。

これは戦争で被害を受けたベトナム国民にとどまらず、ベトナム戦争時に戦地にいたアメリカ兵にも同様の被害が出ています。

戦後母国に帰還したアメリカ兵とその家族にも、癌を始め発達障害等が発生しており、枯葉剤を扱ったことによる健康被害が出ています。ダイオキシンを含んだ枯葉剤は、戦後長きにわたりベトナム人、アメリカ人を苦しめることになりました。

今なお使われる2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)

このような社会問題になったにも関わらず、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸は今でも除草剤として一般的に使われています。

2,4-ジクロロフェノキシ酢酸はフェノキシ系の農薬です。
多くの試験が行われ、体への影響では頭痛、吐き気、脱力感、嘔吐、咳、咽頭痛、発赤、痛み、腹痛、灼熱感、下痢、意識喪失などの症状が出るとされています。
一般的な症状においても軽症から重症まで様々な症状があるようです。



症状はいつ出る?発症時期は分からない

ここで注目したいのは予想される症状が急性のものもある中、遅発性症状もあるというところです。
遅発性症状ということは、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸の含まれる除草剤を使ったとしてもすぐには何ともないということです。しかしその後いつの日か何らかの症状が出るかも知れないわけですね。
それは治ることなく生涯にわたり続く症状かも知れないのです。

『農薬毒性の辞典』によると動物実験での発育不良や奇形が見られ、軟組織がんや非ホジキンーリンパ腫との関係の示唆、ベトナム戦争時と同様にダイオキシン類が含まれているなどへの指摘があります。
人体への中毒は先の安全データシートの症状の他に失禁、けいれん、体温上昇、脈拍増加、血圧降下、肝機能障害もあげられてます。


出典 『農薬毒性の事典』 三省堂 加工して作成

いたるところでこれほどまでに毒性が確認されているにも関わらず、未だに使用が認められていることが不思議でなりません。

2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)の含まれる除草剤は、園芸店やホームセンターで何種類も取り揃えられており、簡単に購入することが出来ます。
普通に簡単に買えるものですから、それほどまでに怖い除草剤だとは殆どの人が思っていないと思います。

2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)について問い合わせ

この2,4-ジクロロフェノキシ酢酸は、家庭菜園だけにとどまらず公園やゴルフ場でもよく使われています。この成分の安全性についてメーカーに質問してみました。
質問したメールはこちらです。

二日後、会社の担当者から直接電話がかかってきました。
今までの経験上、電話がかかってくるのは答えにくい内容の時だけです。今回はどうでしょうか。

話の内容を要約すると、

インターネット上でダイオキシン云々と書かれているが、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸はダイオキシンの心配はない。
この除草剤は単に物と一緒で例えると「塩」という物質と何ら変わりはない。
ペットの心配については、雨でも降っていなければ夕方に散布して翌日土が乾いていたらペットが走り回っても大丈夫。

という内容でした。

突っ込んで質問もしませんでしたが、「塩と一緒」は言い過ぎな気がします。
濡れているといけないのはハッキリとした理由はわかりませんが、濡れていて皮膚にでもつけば経皮吸収しやすくなるなど、とにかく体に害が及ぶためでしょう。
(この辺りはくれぐれも濡れないようにと念を押されたので間違いないのではないかと思います)
(経皮吸収に付いて詳しくはこちらの記事へ↓
経皮吸収ってなに?日用品や化粧品が肌から浸透してるの!?

安全という言葉は一切なく、危険性は低いとだけ言われました。
また、○○の試験を合格している等の言葉も一言もありませんでした。

 

除草剤を使えば雨に流され、やがては私たちが口にする飲料水に到達するでしょう。
手で草ひきするのは大変だからと、安易に除草剤を使用するのは危険が伴う可能性があります。やがては自分の首を絞めることになり兼ねません。

このように取り扱いに注意が必要な農薬であるのに、私たち消費者が簡単に購入できるというのはどうなのだろうかと疑問に思います。
ガーデニングや家庭菜園なら出来るだけ除草剤は使わず、あえて手間をかけて草むしりに励みたいですね。

2,4-ジクロロフェノキシ酢酸についての詳しいことは食品安全委員会が案として出していましたのでリンクを貼っておきます。

ハザード概要シート(案)(2,4-D) – 食品安全委員会