季節の変わり目にドライクリ―ニングを利用する方は多いでしょう。
長くしまっておく衣類やおしゃれ着などはクリーニングが便利ですよね。

私はクリーニング店内の匂いが苦手なので出来るだけ家で洗濯し、必要最低限だけクリーニングを利用するようにしています。
それにしてもあの気になる匂いは何なのでしょうか。

有機溶剤で洗うドライクリーニングに危険性

通常家庭では水に洗剤を入れて洗濯物を洗います。これは水溶性の汚れを落とすことに長けている洗濯方法です。

一方ドライクリーニングは石油系などの溶剤を用い、脂溶性の汚れを取ることに長けた洗濯方法です。
なので家庭では落としにくい口紅や食べ物の油汚れ、襟や袖口の汗染みなどを落とすことができるのですね。

しかし頑固な汚れを落としてくれるドライクリーニングの溶剤には注意が必要です。中には化学火傷を起こしてしまうものがあるからです。

化学火傷の危険性

ドライクリーニングに使われる有機溶剤は主に3種類に分かれます。

1.パークロロエチレン
2.フッ素系溶剤
3.石油系溶剤

この3つです。
石油系溶剤を使ったドライクリーニングでは戻ってきた衣類を着て肌が赤くなる、ただれる、水ぶくれが出るといった化学やけどの症状が起きる事故が起こっています。

クリーニングから戻ってきた服はしばらく風を通すようにとよく言われます。
有機溶剤は揮発性なので衣類には残っていないことになっていますが、仕上がった時にビニール袋に覆われているので、ごくまれに完全に乾ききっておらず溶剤が残っていることがあるのです。
そのような衣服を密閉されたクローゼットなどに保管すると、化学やけどを起こすことがあるので要注意です。

ちなみに娘は先日クリーニングを取りに行き、「匂いがかなり残っているので溶剤が残っているのかもしれません。よく風に通してください」と言われたそうです。



胎児にも影響する危険成分

ドライクリーニングの溶剤は洗浄力に優れた強力なものが多いです。

以前まで使用されていた石油系溶剤の1.1.1-トリクロロエタンと、フッ素系溶剤のCFC-113(フロン113)は、オゾン層を破壊することが後に判明しました。
このため1993年にモントリオール議定書で、この二つの物質は使用の禁止など規制の強化が決められました。

国内のクリーニング業界では現在、塩素系溶剤にパークロロエチレン、フッ素系溶剤では代替フロンが使われています。(代替フロン(HCFC-225)も製造時期が2020年までと決められています)

日本のクリーニング業の老舗メーカーに、どのような溶剤を一番使っているか訊いて確かめてみることにしました。

ドライクリーニング 問い合わせ 質問

すぐに返事を頂き、一番多く使う溶剤はパークロロエチレンだと教えて頂きました。

ドライクリーニング 問い合わせ 回答

日本の最大手と思われるメーカーでパークロロエチレンを一番よく使っているのなら、他でも使用しているお店は多いのではないでしょうか。

実はこの塩素系溶剤のパークロロエチレンはかなりの危険性を持っていると言われています。

パークロロエチレンは四塩化エチレンのことで、別名はこんなにもたくさんあります。
パークロロエチレン、テトラクロロエチレン、パークロルエチレン、テトラクロルエチレン、1.1.2.2-テトラクロルエチレン、TCE、パークレン、ペルクロロエテン…と舌を噛みそうな名前ですが、全て四塩化エチレンになります。
物質名が違っていても中身は同じものです。

取り扱いに十分な注意が必要で、健康に対する有害性として皮膚や口から入れば急性毒性があり発ガン性もあります。他には生殖能又は胎児への悪影響の恐れの疑い、母乳からも乳児に影響するという意見もあります。
長期に暴露すると神経系、肝臓、呼吸器、腎臓の障害の恐れもあり、水生生物には非常に強い毒性であるとしています。

もしこの溶剤が衣類に残り、皮膚から目から鼻から、そして服を着た時に体に影響が出ないか心配されるところです。

法律規制について

健康や環境に非常に危険性のある有機溶剤のパークロロエチレンは、世界的には使用禁止などの規制を行う方向にあります。

しかしながら日本では環境省による大気への放出に規制があるぐらいで、ドライクリーニングなどへの使用には規制の制限はされていません。特別産業廃棄物として廃棄の方法に規制があるだけです。
作業を行う労働者にも重篤な健康被害が予想されるということで、正しい使い方をするように指導を行っている程度です。

ドライクリーニングの危険性を避けるには

ドライクリーニングは落ちにくい汚れを化学的に落とすものですから、単純に考えても強い洗浄力を持つのは容易に想像できます。そしてそれは明らかな危険性を持っているようです。人体はもちろん大気への悪影響を及ぼすことにも繋がり兼ねません。

この危険性を回避するにはまずは家庭で洗えるものは自分で洗うと良いでしょう。服の購入時にはドライクリーニングに出さなければならない服は選ばないのもひとつの方法です。

また、溶剤が乾ききるには時間が必要ですから、即日仕上げのような短時間で仕上げるドライクリーニングは避ける方が賢明かもしれません。

仕上がった服は持ち帰ったら必ずビニールを取り外し、通気性のあるカバーに変えるなど、体に害が出ないようにすることも必要ですね。