調味料で一番古い歴史があるのは、ひょっとしたら酢かも知れません。

酢は紀元前5千年頃にはその製造の記録がありました。
有名なヒポクラテスは病気の治療に酢を使ったと記されています。クレオパトラも美しさを保つため、酢に真珠を溶かして飲んでいた話も有名です。

健康に良いイメージですが、今回は酢の中でもどんな酢を選んだら良いのか検証してみます。

時間とコストをかけない酢が多い?

最も普及していると見られる穀物酢の原材料は、次のようなものが一般的です。

原材料名 穀類(小麦、米、コーン)、アルコール、酒かす

酢は基本的に保存性も高く、添加物を必要としません。

原料の小麦や米から麹を作ることから始まって酒母作りに入り、それが完成すると徐々に発酵が始まり約30日ほどで醪(酒)が完成します。醪(酒) は酢酸菌の発酵によってアルコール分が変化して酢になるのです。醪(酒)の仕込みから約80日~120日後にやっとお酢の完成となります。
そして熟成期間はさらに240日から300日必要となっています。

本来はこのようにして作られる酢のはずですが、今流通している酢の多くはそんな時間はかけていません。

本来の作り方をしていたら時間とコストが掛かりすぎます。そこで大量に早く製造できる速醸法(通気法、連続発酵法)で作ったものが殆どというのが現状のようです。
発酵など丹念に時間と手間をかけて作られた酢には栄養が詰まっているのに対し、短期間に大急ぎで作られた酢はそれほどの栄養価は期待できません。

国産米のみの酢の現実

いつも行くスーパーマーケットで酢を探していると「純米酢」が目にとまりました。
成分表示の原材料名を見てみると「米」としか書いてありません。それも100%国産の米と書いてあります。

酢 原材料

これはひょっとしたらじっくり熟成させた昔ながらの製法(静置発酵) の酢かもしれないと思い、メーカーさんに問い合わせてみました。問いあわせたメールはこちらです。

酢 質問 問い合わせ

朝10時頃にメールをして夕方4時頃には返事を頂きました。
どんな内容でも返事の転記はご遠慮くださいという事でしたので、簡単に返事の内容を纏めます。

結論から言うと、この原材料が米だけで作られている「純米酢」の製造にかける時間は約1~2か月だという回答でした。他の一番価格の安い「穀物酢」を始め、どの種類のお酢も同じ時間で製造しているそうです。
つまりは本来の酢の製造方法(静置発酵) ではなく、速醸法(通気法、連続発酵法)と呼ばれる製法なのですね。

静置発酵ではないかと期待したのですがそうではありませんでした。
ちょっと残念です。



静置発酵 の酢にはアミノ酸や有機酸がいっぱい

酢はどの種類でも添加物が使われることはありませんから、そういう意味では安全性に問題はないでしょう。

私が昔の製法(静置発酵)に拘るのは、本来の酢は健康的で体に有用なアミノ酸有機酸を多く含む調味料であるというところです。

酢の種類によって栄養素は変わってきますが、酢にはクエン酸酢酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸等の有機酸が含まれています。また体を構成するアミノ酸も含まれます。

このような酢の特徴として、消化吸収を助け、食欲増進させたり、美肌効果や骨粗しょう症予防、イライラの予防、ダイエット効果など、数え上げたらきりがありません。
こんな効果が期待できるのは、じっくり熟成させた栄養価の高いアミノ酸や有機酸が入っているからです。

酢

単に味付けに使うのなら、添加物も入っていない危険性もない速醸法(通気法、連続発酵法)でも構わないでしょう。でもそれではせっかく世界一長い歴史を誇る発酵調味料なのに勿体ない気がするのです。

我が家ではお料理で酢の物を作ったり、寿司酢、二杯酢、三杯酢、ドレッシングのベースにする、中華料理に回しかけるなど、必ずと言っていいほど静置発酵の製法の酢を使うようにしています。
毎回食べるたびに「アミノ酸と有機酸が摂れたなぁ」という気になります。

ちなみに私が今使っている酢は全国的にも有名な飯尾醸造の「富士酢」です。

飯尾醸造 純米富士酢 (1)

製造方法は昔ながらの静置発酵で、原料の玄米は有機無農薬のものです。

飯尾醸造 純米富士酢 (2)

飯尾醸造の酢の拘り物語り

飯尾醸造では酢をもう30年以上前から、有機無農薬の米を原料に昔ながらの製造方法で作られています。

飯尾醸造 純米富士酢 (3)

先々代の社長が酢作りに拘り、原料の米はひとつの集落で全くの無農薬で契約して作ることからまず始まります。
この集落は限界集落なので、この上流には人は住んでいません。つまり農薬が上流から流れてくることはありません。

この集落で米作りのノウハウと、農機具もすべて提供して作られた米から製造されたのが飯尾酒造の玄米酢です。ここまでの拘りは凄いですよね。

飯尾醸造 純米富士酢 【お酢 純米酢 ビネガー 国産 無添加 一升】

添加物が入っていないもので十分だと思うか、原料や製法まで拘るかは人それぞれの考え方だと思います。
ご自分の判断でお好みの酢を選んでくださいね。