近所のスーパーで見かける食パンで気になっていたメーカーがありました。

パンの生地は100%北海道産の小麦のみで自家製酵母を使っています。入っている原材料もどれも食材のみで添加物が一切入っていません。
なのにスーパーでも普通に買える価格なのです。

本当にこんな値段で、表示されているように安全なパンが出来るのだろうかと不思議に思っていましたら、このメーカーさんの試食と勉強会があると言うので行ってみることにしました。

自分たちの納得する心を込めて作るパン

パンの袋の丸に「タ」の文字が目につく通称タマヤパンは、正式には米麦館タマヤ(マイバクカンタマヤ)という名前です。
昭和21年に町の小さなパン屋として創業しました。70年以上の歴史をもつパン屋さんです。

タマヤらしさのあるモノづくりを行い、顔の見えるつながりを大切に、手間暇かけて自分たちの納得する商品を、心を込めて作るというのがこちらの理念です。

タマヤパンのパン作りには想いが3つあるそうです。

① 原材料選びから始める
② 素材の旨味と発酵の旨味を最大限に引き出す製法
③ 添加物に頼らない

私たち消費者にとって嬉しい想いで長年パン作りをされてきたのです。

国産小麦に寄せる想い

この3つの想いによって小麦は国産(主に北海道産)に拘っています。
小麦を国産に拘る理由は、第一に日本の小麦は美味しいという事。
それともうひとつは毎日ご飯を食べるように、パンも毎日美味しく食べて貰いたいという創業当初からの想いもあって、輸入小麦に頼らないことで日本の小麦の生産を増やしたいということでした。

現在日本の小麦は87%が輸入に頼っています。日本の食料の自給率を上げるためにも国産の小麦を使う事に拘っているのだそうです。(これには感動ですね)
また輸入小麦にはポストハーベストの心配もあるので、そんな意味でも輸入小麦は使いたくないとおっしゃっていました。


出典 タマヤパンの勉強会資料

毎日食べるパンは特徴や形を考えて小麦を選ぶそうで、小麦の種類の「春よ恋」「キタノカオリ」「ゆめちから」等々の品種を考え尽くしたバランスで配合しているのだそうです。

しかももっか無農薬で肥料を使わず、土づくりから取り組んで小麦を栽培している北海道十勝の大和田農場の小麦だけで作ったパンの開発にも成功されています。

使用されている砂糖も主に北海道産の甜菜糖と奄美諸島の素焚糖のみです。
これからますます素晴らしいパンになっていくのではないかと思いました。



拘り原料の自家製酵母

原材料の拘りのいくつかをピックアップしてみます。
使われている酵母は米と麹による自家製酵母です。


出典 タマヤパンの勉強会資料

この天然酵母は甘酒っぽい匂いでした。
天然酵母を使うとパンを発酵させるのが自然な形になります。四角い食パンは角がいびつになったり、数日たつとパンの天井部分の真ん中がへこんできたりします。
山形のパンなら、上の丸い部分と下のまっすぐの部分の境目にくびれができたりします。

これは自然の酵母では当たり前のことですが、消費者はへこんでるとか線が入っていると気にする方もいます。

 

大手のパンメーカーでイーストフードを使ったパンは全くそんなことはありません。四角いパンは角まで真四角だし、山形パンもくびれも何もなくとても綺麗です。これを可能にしているのは添加物です。

幾つかのパンメーカーではイーストフードという添加物が使われています。ビタミンCも入っています。
イーストフードは実に16種類もの添加物の中からいくつかを選び、組み合わせてできる添加物です。パンを綺麗に膨らますことのできます。
16種類の中からいくつ添加物を使っても、表示は「イーストフード」とひとつの表示になります。


出典 消費者庁 加工して作成

添加物が入っている綺麗な形の食パンか、形はほんの少しいびつでも天然酵母が膨らませたパンが食べたいかと訊かれたら、私は後者を選びます。



別注のタマヤパンオリジナル油脂

私が今回最も驚いたのは、これだけの拘りがありながらマーガリンが使われているパンがあるということです。

マーガリンと言えばトランス脂肪酸の宝庫です。トランス脂肪酸が心臓に良くない事はいまや誰もが知る事実です。
(トランス脂肪酸について詳しくはこちらの記事へ↓
トランス脂肪酸はどう悪い?摂りすぎか食品チェックが必要かも

なのにそんなマーガリンが入っているなんて信じられないと思いましたが、タマヤパンのマーガリンは違っていました。

油脂メーカーに特別に依頼したマーガリンを使っているそうです。それは植物油脂(主にパーム油と菜種油、米油)に乳化剤、香料不使用の、トランス脂肪酸が全くないというマーガリンです。

このマーガリンを使ってクロワッサンやパイ生地のパンを作っています。
植物油脂のマーガリンを使う事により低価格を実現し、もちろんショートニングも一切使っていません。
こんな事を実現しているなんてとても凄い企業努力、またまっすぐな信念だと思います。

 

紹介されたパンのひとつ、この四角いスチームケーキと銘打ったパンはいわゆる蒸しパンです。

口どけの良いこの蒸しパンの原材料はこちらです。

原材料で食材が並ぶ最後に膨張剤の文字が見えます。
この膨張剤も一般的に使われる助剤としてのアルミニウムは使われていません。(「アルミニウムフリーの膨張剤」と表示出来たら良いのですが…)

少しでも体に良くないかもしれないものは使わないこの姿勢に拍手を送りたいですね。

 

他にもたくさんのお話を聞いたのですが、もう書ききれません。

街のベーカリーショップで美味しいところ、拘りを持っているところは全国各地に山とあるでしょう。
でもここまで安全性に拘って、できるだけ低価格で提供できるよう努力を惜しまず、しかも創業当初からの理念や想いを貫いてこられたことに感動しました。

今は色々なところから引き合いが来ているそうですが、理念や想いを曲げないために添加物を使わない等の拘りで量産が出来ないために(添加物を入れると量産できるそうです)お断りしているのだとか。

こんなメーカーさんがあること知り、とても嬉しかった一日となりました。

タマヤパン