日本の伝統的な保存食と言ったら梅干しに違いありません。

梅雨の前に作る梅干しはおにぎりに入れてよし、お茶漬けによし、お弁当に入れてよし、鰯を炊くときの臭みをとったり、巻きずしの具材になったり、あらゆる料理に色々な形で使えるスーパースター並みの食材です。しかも冷蔵庫に入れる必要もなく、常温で保存できるとても優秀な食材だと言えます。

梅干し

女性に嬉しいダイエット効果や最近では不妊にも効果ありとされ、その他数えきれないほどの効果効能のある梅干しですが、近年その機能を全くなさない梅干しが数多く売られています。
体に悪影響の怖い食品のひとつとなっているのです。

梅干しは今や添加物の宝庫

梅干しの売り場に並ぶ梅干しは、ネーミングが凝ってきています。
まろやか味・はちみつ味・うすしお味etc…ただの梅干しと書かれているものはそうそう見当たりません。味付けされたものか、塩分の少ない事を強調したものが主流になってきています。

うすしお味梅干しの成分表を見ると、

梅干し原材料

梅、漬け原材料 {食塩、砂糖、果糖ぶどう糖液糖、醸造酢、還元水あめ、発酵調味料}、調味料(アミノ酸等)、酒精、甘味料(スクラロース)、野菜色素、ビタミンB1

となっていました。
どの梅干しも似たりよったりの内容ですね。

本来梅干しは、基本的に梅と塩があれば出来る保存食です。

美味しそうな赤色にするため、風味を増すために、赤紫蘇を加えるものも多いですね。白梅もいいですが、やはり赤い色の梅干しは最高です。基本となる梅と塩、そして紫蘇で防カビ、色落ちの防止と食感が保たれています。そして梅干しを使う事で、お弁当などの食中毒も防止したりしてきたのです。

それがいつの間にか、こんなにも添加物だらけになってしまいました。

その他にもたくさん添加物が使われていますが、なぜそんな梅干しが作られるようになったのか見ていきましょう。



減塩と引き換えに足される添加物

日本食は塩分量が多いおかずになりがちです。

30~40年程前からでしょうか、塩分の摂りすぎがいけないという風潮になりました。そのころから梅干しはやり玉にあげられるようになり、塩分の少ない梅干しの開発が始まりました。

ご飯の上の梅干し

家庭で作る場合は一般的に、塩分量は梅の総重量の12%~15%程度になります。この分量だと常温で保存してもカビたりすることはありません。
しかし、最近の低塩の梅干しは大体10%の塩分量、8%のものも見かけます。中には5%の塩分量のものさえあります。

梅干しの塩分量を減らすには、まずいったん通常の塩分量で梅干しにした後に、塩分を抜く作業をします。
そうすると、同時に味も一緒に抜けてしまいます。ですから、いろいろな味付けをすることになるのです。

塩分量が減りますから、保存の為に保存料も入れなければなりません。

保存するためにはソルビン酸、色落ち防止には酸化防止剤、味付けは化学調味料で、すっぱさを出すには酸味料を入れます。これでだいたい本来の梅干しにほぼ近い味付けが完成です。

が、これだけでは塩分が減ったのが消費者には分かり辛いです。もうひと工夫が要りますよね。塩分が減ったことを味で実感させる必要があります。

なのでここから更に添加物を加えていきます。梅干しには本来使わない甘草ステビアなどの甘味料を入れるのです。
すると甘みで塩分を抑えられて、塩分が減ったように錯覚できます。

お椀に入った梅干し

しかし考えるべきなのは、塩分を減らすために、代わりに添加物をふんだんに使った梅干しは、健康的と言えるのかということです。原料がシンプルな本物の梅干しとは程遠い気がします。

しかも調味料(アミノ酸等)などと書かれているものは、いくつ成分が入っていても「調味料(アミノ酸等)」とひとまとめに表示できる一括表示ですから、その中にどれだけ添加物が入っているか、消費者には分かりません。
(詳しくはこちら↓
「保存料不使用」は本当?一括表示で消費者を欺く法の裏ワザ

ですから入っている添加物はもっと多い事になります。その数は数えきれません。

本来の梅干しは常温で保存でき、殺菌、食中毒予防もできる健康食品のひとつです。
添加物だらけで、冷蔵庫に入れなければ腐ってしまうようなものではありません。

本物の梅干しは効果効能のスペシャリスト

梅に関する本を出版されていて、マスコミや講演会でも活躍されている和歌山県医科大学準教授の宇都宮洋才(うつのみやひろとし)先生の研究発表によれば、梅の効能はこんなにもあります。

インフルエンザ予防
胃がん予防
糖尿病予防
食中毒予防
動脈硬化の抑制
血液浄化作用
抗酸化作用
疲労回復効果
食欲増進効果
虫歯予防
カルシウムの吸収促進
ダイエット効果
高血圧化の抑制
鎮痛作用

梅の効能は本当に素晴らしいです。詳しくはこちらもご覧ください。

紀州梅効能研究会
出典 紀州梅効能研究会

宇都宮先生に電話で直接お話を伺ったところ、有名でご多忙な教授でありながら、気さくに質問に答えて頂けました。素人にも分かりやすく説明して下さり、宇都宮先生が研究された結果を見ても、その効能の多さに、梅は健康の為にも摂りいれるべきだと改めて実感しました。

梅干しは塩分が入っているから高血圧の人は食べたらいけないなどとよく言いますが、
宇都宮先生に訊ねたところ、梅自体に血圧を抑制する物質が入っているそうで、食べすぎはよくないけれど、上手く梅を活用すると良いそうです。

もし塩分を気にされるのでしたら、梅干しを漬ける時に天然の塩を使えばミネラル分も補給される梅干しとなり、塩化ナトリウム(NaCl)や加工食品に使われるナトリウムよりずっと体に優しいです。

また、カリウムの多い食材を摂るとナトリウムは排出されるので、積極的にそのような食材を摂るのも良い方法です。
カリウムの多い食材は、主に野菜や果物、豆類。パセリ、豆味噌、よもぎ、アボガド、納豆、ほうれん草等々です。

保存食である梅干しは適量を摂って、梅干しの素晴らしい効能を生活に摂り入れたいですね。

また、梅干しを漬けた時に最初に上がってくる梅酢は小さいお子さんがいらっしゃるご家庭には、何かの瓶に少し保存しておいてほしいものです。
例えば子どものお腹が菌にやられたかもと思った時に、水で薄めて少し飲ませてあげて下さい。クエン酸の抗菌作用で軽い食あたりなどは梅酢だけで治ると言われています。これは昔からのおばあちゃんの知恵袋です。

梅干し効果効能 食中毒予防
出典 紀州梅効能研究会 加工して作成

最近では不妊にも効果があると研究発表されています。良いこと尽くしの梅干しですね。

せっかく梅干しを食べるなら、わざわざ病気を呼び寄せる添加物の豊富な梅干しを選ぶ必要はありません。
味よし、健康に良しの日本の伝統的な保存食梅干しはたった2つか3つの材料でできますから、是非ご家庭で手作りして、安心安全なオールマイティ食品として活用してみてくださいね。