「さしすせそ」と言われる日本の調味料。

さ=砂糖
し=塩
す=酢
せ=醤油
そ=味噌

その中でも酢は、世界的に見ても世界最古の調味料です。

酢

紀元前5千年頃よりその製造の記録があり、かのヒポクラテスは病気の治療に酢を使ったと言いますし、クレオパトラが美しさを保つために真珠を酢に溶かして飲んだ話も有名です。
日本では酢は3世紀ごろには中国から伝わったようです。製造に時間が掛かるため、日本でも世界でも非常に貴重なものでした。

ところが今、その酢はどこにでも安価に大量に出回っています。ヒポクラテスが治療に使ったような、クレオパトラが美貌を守ったような、そんな価値があるとはとても思えない値段で売られています。

実はそういう安価な酢は、本来の酢が持つ命の維持に不可欠なアミノ酸を期待できなくなっています。
一体どういうことなのか、まずは酵素を期待できる日本の伝統的な酢の作り方を見てみましょう。静置発酵法(静置法ともいう)という、米酢の静置発酵法での作り方です。

何工程も経てやっと酢の完成へ

まずベースになるお酒をつくります。
精米した米を十分に水に浸して蒸上げます。
蒸しあがった米を40℃ぐらいに冷ましたら、麹菌をまんべんなくまぶします。
麹菌を繁殖させるために30度近い室温の部屋で、米が固まらないように何度も手でほぐしながら、二日ほどかけて麹を作ります。

醪の仕込み
出典 飯尾醸造

この時の湿度は70%ほどで、たいへん蒸し暑い状態です。

麹が出来上がると次は酒母作りです。小さなタンクに水と麹を入れて酒造用の酵母を入れます。
これに蒸した米を入れ、温度を7℃から20℃の間で微妙に調整しながら約2週間待ちます。すると元気な酵母がいっぱい入った酒母の完成です。

ここでやっと酢の製造のもととなる、醪(酒)の仕込みの段階です。

米酢の仕込み
出典 飯尾醸造

出来上がった酒母を大きなタンクに移し替えたら、水、麹、蒸し米の順に投入していきます。これも一度に入れるのではなくて何度かに分けて行います。

投入から2日後には発酵が始まり、約30日で醪(酒)が完成します。醪(酒)の中にはたっぷりとアミノ酸が入っており、これが美味しい酢に生まれ変わるのです。

出来上がった醪(酒)は種酢(前に作った酢の事)と水の中に入れられ、40℃の温度で温めます。
表面に酢酸菌膜が浮かび、2~3日も経てばこの酢酸菌膜が表面を覆いつくし、酢酸発酵が始まります。この酢酸発酵によって醪(酒)のアルコール分が酢に変わっていくのです。

この仕込みから80日から120日後に、やっとお酢の出来上がりとなります。

静置発酵
出典 飯尾醸造

自然の力、微生物の力ですから、このように時間が掛かるのは当たり前なのですね。

このような作り方ですから、単純な酸味だけではなく酢酸クエン酸をはじめとする有機酸が多く、しかも体に良い栄養素が多く含まれているのが分かると思います。またアミノ酸も多く含まれ、このアミノ酸は命を繋ぐために無くてはならない存在でもあるのです。

このように有用な健康成分が多く含まれた酢は、疲労回復、食欲増進、脂肪燃焼、カルシウム、マグネシウムの収集を助けるなど、健康的な体作りには欠かせない役割を果たしてくれます。さらに美肌効果を持ち、骨粗しょう症の予防も手助けします。

まさに良いこと尽くしの酢ですが、それは有機酸やアミノ酸があってこそです
一方今流通しているほとんどの酢は、このように手間暇かけた作り方でもなく、その内容も健康的ではありません。



問い合わせて残念、チープな酢は中身もチープ

最近よく見かけるお酢は速醸法(通気法、連続発酵法)と呼ばれる方法で作られたものがほとんどのようです。速醸法と言う製法はどういう作り方なのか見てみましょう。

ハイペースで出来上がる安価な酢

ベースとなる水や酢酸菌をタンクに入れます。この時の酢酸菌は、遺伝子組み換えなどでより菌や熱に耐えるように研究されているようです。
(遺伝子組換えについては関連記事へ↓
「遺伝子組換えではありません」は本当?穴だらけの表示義務

発酵が進みやすい温度にしておきます。タンクの上から空気を大量に送り込んでかき混ぜ、細かい泡をつくります。細かい泡で空気に触れる面積を多くするわけです。
こうすることで、本来は酢のもととなる醪(酒)までに約2ヶ月、醪を仕込んでから出来上がるまでに後80日~120日必要なところ、わずか1ヶ月程度で出来上がります。(発酵に24時間あれば出来るという人もいます)

私が尋ねたメーカーさんによると、この速醸法で(こちらは通気法と言ってました)米から作った酢と醸造アルコールから作った酢と酒粕から作った酢をブレンドし、品質が一定になるようにして低価格を実現しているということでした。
タンクに入れる量の違いと季節の違いで1ヶ月から長くても3ヶ月で製品になると言っていました。

「栄養価のアミノ酸や有機酸の量は違いがありますか?」と聞くと

「調べていないのでデータがありません」とのご回答でした。

アミノ酸や有機酸が多いとは考えにくい気がしますね。この栄養素があるからうまみ成分にもなるわけです。
この速醸法では「くせがない」という言い方も出来ますが、酸味は強く風味のないまろやかさに欠ける酢になってしまいます。

また、多くの安価な穀物酢に入っている醸造アルコールも気になりますね。

大量生産しても単に酸っぱいだけ

醸造アルコールの原料の殆どがサトウキビの搾りかすから出来ていますが、海外からの粗悪な醸造アルコールも入って来ていますから、破格で販売されている酢にはそれが使われているかも知れません。
これが一般の陳列棚に並ぶ大量生産のお酢なのです。

これでは発酵食品とは言い難いですが、まろやかさやコクが無いにしても、味だけはお酢っぽくなっています。
しかし静置発酵法と比べたら、体内で良い働きをする栄養素はほぼ無いに等しいのではないでしょうか。体に必要とされるアミノ酸も全く期待できません。

歳をとるごとに減ってきてしまう潜在酵素を補う事もできないでしょう。
(潜在酵素とは、生まれた時からすでに体内にある酵素のことです。詳しくはこちらの記事へ↓
栄養があっても酵素がなければ死ぬ。病気知らずの長寿の秘訣…酵素の力で免疫力アップ1

ただ単に酸っぱいだけです。
このようなお酢では「お酢は体に良いよ」とは、とても言えない気がします。

お酢には様々な種類があり、穀物酢をはじめ、米酢、黒酢、リンゴ酢、ぶどう酢、果実酢、イタリアのバルサミコ酢など、あらゆる穀物、果実から作られます。いろんな料理に使えますし、味わい方も豊富です。
製造にひと月位しかかからない単に酸っぱいだけのお酢よりも、酵素や酵母がたっぷり入った発酵食品のお酢の方が体も喜ぶことでしょう。

 

伝統を守り100年以上の歴史をもつお酢を作るメーカーさんは全国にたくさんありますので、ご自分のお料理に合うお酢を探してみるのも楽しいと思います。
画像をお借りした飯尾醸造さんは安心安全で健康的なお酢を作ってくれていますので、よければご参考に。

富士酢醸造元 飯尾醸造

【農薬不使用】 純米富士酢

ぜひ健康を守る栄養素を体に摂り入れるためにも、きちんとした製造方法で作られたお酢でお料理してみてくださいね。味わいが変わってきますし、もちろん健康に繋がりますよ。