昆虫の世界に異変が起きていることをご存知でしょうか。
聞き慣れない言葉ですが蜂群崩壊症候群と言われるもので、近年ミツバチの世界で見られます。

たんぽぽ 蜂

これは虫の世界にとどまらず、人間にも関係のある非常に危険なものなのです。

ネオニコチノイド系の農薬と蜂群崩壊症候群

今や世界中で農作物を育てるために化学肥料と農薬が使われています。長く主役を務めていた有機リン系農薬の有害性が問題視されるようになってから、ネオニコチノイド系の農薬が使われるようになりました。
このネオニコチノイド系の農薬を使う事で、ミツバチに大変なことが起こっているのです。

白い花と蜂

ネオニコチノイド系の農薬の成分はアセタミプリド、イミダクロプリド、ニテンピラム、クロチアニジン、ジノテフラン、チアメトキサム、チアクロプリド、そして新しい浸透性農薬としてフィプロニルがあります。

農薬というものはその成分によって殺虫できる虫が変わりますが、このネオニコチノイド系の農薬の特徴は主に3つあげられます。

  • 神経毒性
    昆虫の神経系のアセチルコリン受容体に結びついて
    神経を刺激し正常な働きを攪乱する。
  • 浸透性
    水溶性で作物に吸収される。
    吸収されているので洗い流せない。
  • 残効性
    条件によっては地中に長期にわたり残留する。

ミツバチにとって大変大きな問題は、この神経毒性です。



神経が狂う農薬で蜂が激減。巡り巡って食糧難に?

ミツバチの世界では巣で女王蜂と幼虫が生活し、多くの働き蜂が餌となる蜂蜜や花粉を巣に運んできます。

蜂の巣

運ばれた蜂蜜と花粉の餌で、次の世代の働き蜂や女王蜂が誕生して育っていくということが繰り返されているのです。

これは単純な繰り返しですが、神経毒性を持つネオニコチノイド系の農薬を使う事で働き蜂の神経に作用し、働き蜂が自分の巣に帰れなくなるということが起きているのです。
そうなると蜂の群れ自体が消失します。これが蜂群崩壊症候群です。働き蜂が帰ってこなければ、女王蜂も幼虫も死んでしまいます。

 

実はこれはミツバチだけの問題ではなく、人類の食糧の危機でもあるのです。

なぜかと言うと、人が食べている農作物は肥料と水だけで育っているわけではありません。
もちろんそれは必ず必要なものですが、農作物を実らせるためには受粉することが最大の条件です。受粉をしてくれているのはミツバチですね。

ラベンダーと蜂

ミツバチが花の蜜をとり花粉を集めることで自然にどの作物も受粉が行われ、実っています。ミツバチがいなくなれば、人類の食糧はなくなってしまうのです。

EUはもう使用禁止に

いま日本の養蜂家の間でも蜂群崩壊症候群は大変困った事態となっており、2013年7月には神奈川県三浦市の養蜂場の一カ所で計13群(蜂の群れ)のうち、4群が失われました。
同年8~9月には横須賀市と葉山町の系6カ所の133群でミツバチがいなくなる事態が起きています。そのうち98群は全滅しました。
2014年も同じくこの3市町で44群のミツバチが巣に帰ってきていません。

出典 毎日新聞 蜂群崩壊症候群:働きバチ巣に帰らず 三浦半島で大量発生

この事態は世界中で起こっています。

ネオニコチノイド系の農薬ができた1990年代のはじめから、ヨーロッパ全域、インド、ブラジル、アメリカ、カナダで報告が上がっています。
各国もネオニコチノイド系の農薬が原因だとは断定してはいないものの、EUではネオニコチノイド系の農薬が原因である可能性があるとして、使用を制限しました。

 

ネオニコチノイド
出典 Wikipedia 加工して作成

 

日本はこういった対応が遅く使用の制限はまだされていません。何かあってからやっと動き出すのが日本の常であるようです。
このままネオニコチノイド系の農薬の使用を続け、これが原因で蜂がどんどん居なくなり、食物の受粉がされず食糧不足に至った場合はどうなるのでしょうか。

洗い落とせずそのまま体内へ浸透する農薬

ミツバチの神経を狂わせる農薬。
しかもこの農薬は野菜に浸透するので、どうやって洗っても、絶対に落ちないのです。

農薬 野菜

そんな野菜を食べた人間の神経に影響はないのでしょうか?

ネオニコチノイド 神経毒
出典 一般社団法人アクト・ビヨンド・トラスト

安全性が分からないいまま、大量に使われてきたネオニコチノイド。

安全基準の緩い日本ですから、ネオニコチノイドの解明はまだこれからです。
安心安全と分からない物には、手を出さない方が賢明と言えるでしょう。

無農薬有機野菜を取り扱う団体は全国にたくさんありますので、大切な家族のためにはそういった野菜果物を選ぶように心掛ける方が良いでしょう。
何かあってからでは取り返しのつかない事になってしまいますから…