ケーキやパフェやフルーツ蜜豆など、デザートに使われているみかんはどれも粒がそろっています。崩れたみかんは見当たりません。そのほとんどはみかんの缶詰なんですね。
誰があんなに綺麗にむいたんでしょうか?

みかん

このことを不思議に思った事はありませんか?私は子供の時から不思議でした。
しかし答えは意外なほど簡単でした。薬品を使うとあのようにキレイな形でむくことができるようです。

塩酸シャワーで形を揃えるみかんの缶詰

どのように皮を溶かすのかと言うと、まず最初にみかんの一番外の外皮に蒸気を当てて柔らかくします。
柔らかくなったみかんはピーラーで皮を剥いていきます。もちろんこの段階も機械で、人力ではありません。
中身だけになったみかんは濃度1%以下の塩酸のシャワーをかけて薄皮を柔らかくします。

濃度1%ってどんなものなんでしょうか。
薄いのかも知れませんが、理科の授業で危険だと教えられる、あの塩酸です。

塩酸のシャワーの働きにより、薄皮の成分であるセルロースという成分が分解、つまり溶けることで、中身と薄皮が離れます。
次にアルカリ性の水酸化ナトリウムに漬けると、 ひと房ずつのミカンの完成です。

その後は水でさらします。



危険な毒物も「中和」か「除去」していれば表示の義務がない

みかんの缶詰はシロップに漬けるという最後の行程を経て出来上がります。工程的には割と単純ですが、塩酸や水酸化ナトリウム…と、いくつかの薬品が使われています。

薬品棚

塩酸の危険性は今更言うまでもありません。毒物及び劇物取締法により劇物に指定されているものです。

 

塩酸
出典 Wikipedia 加工して作成

水酸化ナトリウムは苛性ソーダとも言います。食品に使う場合などに、苛性ソーダと呼ばれることが多い物質です。こちらも塩酸同様に毒物及び劇物取締法によって劇物の指定を受けています。

水酸化ナトリウム
出典 Wikipedia 加工して作成

国際化学物質安全性カードによれば、腹痛、口や喉の熱傷、咽喉や胸の灼熱感、吐き気、嘔吐、ショック/虚脱等の症状が出ると書かれています。

水酸化ナトリウム (1)
出典  国際化学物質安全性カード  加工して作成

直ちに医療機関に連絡するようにも書かれていますね。

水酸化ナトリウム (2)
出典  国際化学物質安全性カード  加工して作成

塩酸は酸性で、水酸化ナトリウムはアルカリ性で、ふたつを使うことで中和されているから問題ないということですが、こんな薬品使っても大丈夫?と心配になりますね。
水にさらすから残っていないはずということですが、消費者として不安はぬぐえません。

表示の義務がない危険な成分がある

塩酸にしても苛性ソーダにしても、食品添加物として日本では認められています。製造段階で中和または除去していれば、表示しなくて良いことになっているのです。

みかんの缶詰も完全に中和されていることになっているので、表示の義務はありません。

しかし、完全に中和しているというのは本当でしょうか?
中和と言っても、除去ではありません。
酸性でもアルカリ性でもないけれど、薬品自体は残ってないんでしょうか?

「今は業界も進化して、安全性の高い薬品に変わっているかも…」ふとそう思ったので(そうだったら嬉しいなと思ったので)、缶詰と言えば一番に思いつくあるメーカーに問い合わせをしてみました。

問い合わせたメールはこちらです。

みかん缶詰 問い合わせ

朝9時に問い合わせをしたら午後2時頃に、問い合わせたメーカーの若い女性の方から直接電話がかかってきました。話の内容は次のようでした。

 

「弊社のみかんの缶詰について、お問合せ有難うございます。
みかんの缶詰の製造方法ということですね。

まずみかんは最初にお湯を使い柔らかくします。
その後機械で柔らかくした皮をむきます。
次に薬品である酸の液に曝した後、今度はアルカリの液に漬けますと、中の薄皮が取れまして、あのきれいな一房のみかんになります。

弊社では最終砂糖を溶かしたシロップを入れまして完成となります。」

 

…というのが、お返事いただいた内容です。
酸は塩酸なのか、アルカリの液は一体どういう薬品名なのかはあえて聞きませんでした。

今までの経験上、メールで返事し辛い時は、決まって優しそうなお声の方から直接お電話を頂くことが多いです。音声なら録音でもしない限り、記録として残りにくいからかもしれません。

電話をくれた方は、きっと上司に言われてこのように回答してきたのだと思うので、あえて突っ込んだ質問はしませんでした。電話の内容で使われている薬品がどのようなものか、察しがつくと思います。

もし従来の製法で塩酸や苛性ソーダなどと表記があれば、買うのを躊躇しますよね。こんな薬品が残っているかもしれない缶詰は、やはり多くの方がためらうのではないでしょうか。

みかん2

ちなみに缶詰のみかんに圧力をかければ、更にみかんが一粒ずつに離れます。これをジュースにすると、つぶつぶオレンジジュースの出来上がりです。つぶつぶオレンジと言うと普通のジュースより得した気がしますが、実際は薬品を使用して作られるものだったのです。

缶詰でもジュースでも、みかんを選ぶことでビタミンを摂った気になってしまいますが、その陰にはこんな話が隠れていたのですね。

みかんでビタミンを摂りたいと思うなら、自分の手で皮を剥いて食べるみかんが一番美味しいですし安心かなと思います。
どうしても缶みかんが欲しいのならば、下記のように安全性に拘って作っているところもありますので、そういったところから取り寄せると良いのではないかと思います。

生活クラブ 缶みかん みかんの缶詰
出典 生活クラブ