夕食のメインはお肉ですか?お魚ですか?
今夜は豚カツです!というご家庭もあるでしょう。

豚肉

その豚肉なのですが、知るとちょっと食べ辛くなる問題を抱えています。

麻酔なしでの去勢

アメリカ産の豚肉も牛肉のように飼育方法には疑問が残りますが 、日本の豚の飼育にも同じような問題があります。
(牛肉について詳しくはこちらの記事へ↓
牛肉は高カロリー食・ホルモン剤・抗生物質で思い通りの品質へ。

豚の飼育では、まず雄豚は生まれてすぐ去勢されます。多くの国では去勢そのものや、麻酔なしでの去勢が禁止されている中、日本では麻酔なしの去勢が実施されることが多いようです。
雄豚は肉が硬いので柔らかくするためだとか、雄豚特有の匂いを消すためだとか言われています。

しかし、本当にそうなのでしょうか…
このように、去勢をしていない方が独特の風味があって美味しいという意見もあります。

「アニマルウェルフェア」を考える~豚の去勢について
出典  NPO法人アニマルライツセンター 加工して作成



病気予防の抗生物質の問題

豚はもともと清潔好きで神経質な動物ですから、狭い場所で過密に飼育するとストレスですぐに病気になってしまいます。
病気になっては元も子もないので、病気にならないようあらかじめ抗生物質を飼料の中に入れておきます。多くの養豚農家では注射器を持っていて、自分たちで抗生物質を打つことがあります。

これで予防になると思われるかもしれませんが、実はこの抗生物質には大きな落とし穴があるのです。

抗生物質はとてもよく効く薬ですが、摂りすぎは体に良くはありません。

体内には本来、バイ菌から体を守ってくれる常在菌が住んでいます。しかし抗生物質によってその良い菌たちが死んでしまいます。
すると体を守るものが居なくなって(つまり免疫が下がってしまって)他の菌に侵されやすくなってしまうのが問題になるのです。

抗生物質VS耐性菌

抗生物質のデメリットは、摂りすぎて常在菌が減り、体が弱くなるだけではありません。ずっと抗生物質を摂っていると、病原菌がそれに負けないようにとさらに強い菌に変化していきます。これを耐性菌と言います。

もうこの耐性菌には同じ抗生物質は効きません。これに対抗するにはもっと強い抗生物質を使わなくてはいけません。

耐性菌 抗生物質

するとまたそれに対する耐性菌ができて…
もっと強い抗生物質を使って…
また耐性菌ができて…

ということが繰り返される結果となります。まるでいたちごっこです。
最後には抗生物質の効かない耐性菌が出来てしまうかもしれません。

抗生物質を摂りすぎると、それに頼らなくては菌にやられてしまう弱い体になっていき、どんどん常在菌も減っていくため体を回復させる力がなくなってしまいます。

最近はネット上でもよく見かける話題ですが、耐性菌vs抗生物質のこの無限ループに落ちてしまうと、そこから抜け出すことは困難でありなかなか元の健康体には戻れません。
抗生物質は私たちにとって時には頼もしい薬ですが、牙をむくと恐ろしい使いどころの難しい物質なのです。

上記の説明のように、抗生物質を使っても耐性菌が生まれる限り、病気の豚が出てくるケースがあります。O-157を引き起こした牛や、鶏についても同様です。
このような現状にチラホラと危険を指摘する声が上がっています。

檻の中の豚

では、その病気になった豚はどうなるのでしょうか。普通に考えたら処分でしょうが、実はそういうわけでもないのです。

病変部位以外は食肉として合格

豚に病気が多いことは日本各地の豚の生産に関わるところで発表されています。でも病気になった豚のお肉全てが処分されるわけではありません。
つまり、どういうことでしょうか。いくつか参考に見てみます。

滋賀県食肉衛生検査所の平成25年度の豚のと畜検査の状況です。

豚廃棄率 滋賀県
出典 滋賀県

25年度、滋賀県ではと畜頭数は5.290頭でした。
そのうち健康だった豚は1.808頭。
一部廃棄になった豚は3.471頭。一部廃棄の豚の割合は、計算すると約65.6%にのぼります。

仙台市の表もわかりやすいです。

豚廃棄率 仙台市
出典 仙台市役所 加工して作成

仙台市では平成26年度の豚の畜頭数は90.540頭。結構多いですね。
そのうち全部廃棄は86頭で、割合にすると0.1%。
一部廃棄の頭数は28.724頭になり、31.7%に当たります。

一部廃棄の頭数は数字では仙台市の方が低いですが、31%以上の豚に病変があったことが分かります。(結構多いですよね)

また更に驚くのは、病変部分を取り除いたその他の部分は合格となり、私たちの食卓に並ぶことになるということです。残った病変部位に関しては、その多くがペットフードに回されるとも言われています。

どんなに衛生管理をしても神経質な動物である豚は病気になりがちです。豚の生産者からすれば、病気にさせないよう抗生物質を与えたくなるのも無理はありません。
でもそんな薬をたくさん与えられて育った豚が、そして病変部分だけを取り除いた食肉が、私達の食卓に並んでいるのですね。

もちろん政府も抗生物質の基準が守られているかの検査を行っています。この検査は抜き打ちで行われます。
しかし保健所に聞いたところ、食品衛生検査所の人員は非常に少なく皆無に等しいのが現状で、全ての豚を検査する事は困難だそうです。検査を受けないまま食肉として出回ることになる豚も居るのということでした。

もしかしたら今日調理した豚肉は、抗生物質が与えられ、他の部位に病変のあった豚肉だったかもしれません。

豚肉

今夜はとんかつだ~!とは簡単に喜べないですね。

安全な豚肉を提供してくれているところ

安全な食材を提供する所もけっこうあります。安全な豚肉をお探しなら、そちらで購入されるのも良いかと思います。

らでぃっしゅぼーや
よつ葉ホームデリバリー
生活クラブ
安全農産

等々、大きな団体から小さな団体まで、良心的なところはたくさんあります。

また、体験型の農場もおすすめです。
伊賀の里 モクモク手作りファームのように安全な食材でソーセージを作るなど、子供と遊びながら体験するところもあちらこちらにあります。こんなところで購入されても良いのではないでしょうか?

もしかわいい子ブタが居たら、抱っこさせてもらえるかもしれませんよ。

子豚

お子さんと楽しみながら、安心できる食材でソーセージの手作り。
きっと素晴らしい思い出になると思います。