赤ちゃんを授かり、出産してわが子の顔を見た時の喜びは今でもしっかりと覚えています。初めてこの手に抱いた時の湧き出るような感動も、生涯忘れる事はないでしょう。
初めての授乳は緊張もしたけれど、涙が出るほど嬉しかったものです。

ところで最近は離乳時期も早いようですし、母乳で育てる人も減ってきていると聞きました。

母乳 粉ミルク どっち派?

今回は母乳と粉ミルクのお話です。

母乳と粉ミルク…人と牛では育てる対象が違う

粉ミルクもどんどん進化して、あれこれ色んな栄養など入り、新しくなってきているようです。
中には母乳で育てると胸の形が変わるからと、粉ミルクだけで子育てする方もいると聞きます。

しかし原点に戻って考えてみると、どんな動物も、赤ちゃんはお母さんの母乳で成長するようにプログラムされています。

粉ミルクのもとは牛のお乳です。
牛乳は、子牛を育てるようにプログラムされています。
およそ50キログラムで生まれてきた子牛を、約2年で数百キロの牛に育てるように牛乳は出来ているのです。

ミルクを飲む子牛

その牛乳をもとに作った粉ミルクだけに頼る事に無理はないのでしょうか?
母乳をあげた方はお分かりかと思いますが、牛乳を原料にして作った粉ミルクと母乳では、見た目も味も全く異なります。
母乳は粉ミルクほど濃いクリーム色はしていませんし、味もあまり甘くはありません。



粉ミルクにはできない赤ちゃんに合わせた成分の微調整

また、いわゆる初乳と呼ばれる最初に赤ちゃんにあげる母乳と、その後の本乳と呼ばれる母乳では、中に入っている成分の割合も違ってきます。
初乳にはタンパク質ミネラルが多く存在しますが、本乳になると脂肪分の割合が一番多くなります。

粉ミルクに無くて母乳にはある成分で、赤ちゃんの成長に関係してくる成分としては

善玉バクテリア、免疫グロブリン、酵素、成長因子、ホルモン、必須アミノ酸

があります。

実は粉ミルクにこれらは入っていません。
逆に粉ミルクに無くて母乳にはある成分は100近くに及びます。
その上、母乳をあげる時間帯においても、一回に飲む間でさえも、母乳の中の成分は微妙に変化していくことをご存知でしょうか。

母乳の成分は変化する
出典 クレージー・メーカー 脳を壊す食品をなぜつくるのか /キャロルサイモンタッチ(著者) 加工して作成

赤ちゃんに合わせて成分は刻々と変化し、朝に出る母乳は脂肪分が多いです。
また、一回の授乳につき最初の方の母乳は脂肪分が薄く、授乳後半に濃い母乳に変化します。
この母乳の微妙な成分の調整は赤ちゃんの成長に応じて変化するようになっています。

粉ミルクでは、とても同じようにすることはできません。

タンパク質のベストバランスは母乳が一番

また赤ちゃんの体を作っていく上で、とても重要なたんぱく質は2種類あります。
ひとつは乳清タンパク(ホエー)と呼ばれるもので、体への吸収が早く、筋肉などの体の組織の材料になります。
そしてもうひとつはカゼインと呼ばれるもので、骨を作る材料になるものです。

母乳の場合、乳清タンパク(ホエー)とカゼインの比率がだいたい70対30です。
一方粉ミルクの場合だと製品によってかなりの開きがあり、18対82、あるいは60対40、または100対0の物まで様々です。

70対30という比率が人間にとって一番バランスが良いのです。
ここでも母乳と粉ミルクの差が出てきます。

人間は脳の発達が最優先。できるなら母乳で育てたい

母乳の場合は赤ちゃんの「脳を形成するためのアミノ酸」が多く含まれていますが、牛乳では「体を成長させて筋肉や脂肪組織を成長させるアミノ酸」の方が多く含まれています。
牛はたった2年で大人の体格に成長するのですから、牛乳が筋肉組織等の形成を優先させたお乳になっているのは当然のことですね。

ここまで見ても、やはり人の赤ちゃんは母乳で育ち、牛の赤ちゃんは牛乳で育つように出来ているのが分かります。

また母乳を与える事は、単に栄養補給をしているだけではありません。
赤ちゃんを抱っこして顔を見て、声をかけてあやしたり、お母さんが笑いかけたりすること。これこそが最大の心の栄養補給になるのです。

抱っこされている赤ちゃん

おっぱいをあげる事で母と子の絆が深まる事は当然ですし、母乳を与える行為は赤ちゃんの脳の視床下部、大脳辺縁系などの脳の脳幹構造を活性化させるのです。

赤ちゃんの心理にも哺乳
出典 クレージー・メーカー 脳を壊す食品をなぜつくるのか /キャロルサイモンタッチ(著者) 加工して作成

脳の発達にも、心の発達にも母乳を与える行為は大きく関係してくるんですね。
脳の発達に関わる脂肪酸については、また次に詳しくお話ししていきます。

次回記事はこちら→天才赤ちゃんも夢じゃない!?母乳が脳を作る-母乳VS粉ミルク2